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16ミリ短編映画
「SPARKLING」より
1958年、山形県鶴岡市生まれ。東北芸術工科大学情報デザイン学科映像コース准教授。東京都立駒場高校在学中から8ミリフィルムによる映画制作を始め、和光大学、イメージ・フォーラム映像研究所を経て、実験映画、パフォーマンス等、メディアアートを幅広く手掛ける。16ミリ短編映画「SPARKLING」は、ハンガリーの映画祭「レティナ'91」で、シゲトヴァール市長賞を受賞。NPO法人山形国際ドキュメンタリー映画祭理事。
 
 



1. さかた街なかキャンパス2階にて、今回のワークショップの段取りを加藤到さんから聞く。
2. 誕生日月ごとに組んだ10チームが、出発前にビデオカメラの使い方をそれぞれチェック。
3. 最初の指令まで、もう間近。各チームがビデオカメラ片手に「正午の時報」を求めて、まちにGO!


   



 小学2年生まで鶴岡で育った私は、当時、酒田という港街にハイカラな都会の雰囲気を感じていた。鶴岡よりも大きなデパートと海が見える公園は、休日のドライブの記憶と結びつき、お土産に買ってもらった洋風の焼き菓子の香りを今でもはっきりと思い出せる。その後、東京に引っ越して高校生になった時、8ミリカメラを持って酒田大火後の街の姿を撮影に来た記憶も残っている。1992年に東北芸術工科大学が開学して、再び山形県との縁が生まれたが、芸工大で映像を制作しようという学生たちと付き合っていると、庄内までロケに行く企画が頻繁に浮上する。盆地である山形市近郊で撮影を続けていると、自分たちの殻を突き破ろうと、海へ向かう力が湧き上がってくるようなのだ。というわけで、今までもちょくちょく庄内の海岸まで足を運んでいたわけだが、今回のワークショップは、高校生の時以来といえる酒田の中心市街地が舞台である。

「同時多発ビデオ撮影ワークショップ」と銘打った今回の企画は、これまでもさまざまな場所で試みてきたゲーム感覚の風景コレクションで、さしずめ、風景の借り物競争といった雰囲気だ。当日の参加者は、私が担当する東北芸術工科大学情報デザイン学科映像コースの学生たちと、東北公益文科大学半田ゼミの学生たち、そして一般参加者の総勢30名弱。地元住民と芸工大生が混ざるように組んだチームが、ビデオカメラ片手に酒田の街なかで、正午から3時間、20分間隔で1分間ずつ街の姿を撮影するという内容だ。

   
11:59:30〜12:01:00
指令1「正午の時報を撮影せよ」
12:20:00〜12:21:00
指令2「水の流れを撮影せよ」
  12:40:00〜12:41:00
指令3「おいしそうな食べ物を撮影せよ」
         

   
  13:40:00〜13:41:00
指令6「酒田の暗さを撮影せよ」
  14:20:00〜14:21:00
指令8「地元のおばあちゃんを撮影せよ」

 撮影するのは、あらかじめ私の方で用意した指令書に書かれた対象で、「正午の時報を撮影せよ」という指令から始まり、「水の流れを撮影せよ」という指令があったかと思うと、地元のおばあちゃんを撮らされたり、終いには「酒田の未来を撮影せよ」なんていう指令が10種類ほどある。10組の混合チームは、さかた街なかキャンパスを出発後、その指令に沿って、昼食タイムをはさみつつ、各自がさまざまな解釈を加えながら映像をコレクションしていった。最終的に、出発点に戻った参加者は、録画した10分ほどの映像を、10台のモニターで同時に再生して観たわけだが、その経験は想像以上に楽しめる。まさに十人十色の個性が、ブラウン管にちりばめられる醍醐味を味わうことができるのである。特に今回のワークショップでは、酒田・山形の両大学生と、一般の地元参加者との割合がちょうどよく、ビデオ機材に慣れている芸工大生と、地元の事情をよく把握している酒田市民とのチームワークが上手く生かされていたようだった。なかには、撮影対象のおばあちゃんとすっかり仲良くなってしまい、売り物用の高価なサクランボをいただいてしまった、ちゃっかりチームもあった。
こんな簡単な撮影ゲームでも、地元の人にとっては、いつもと違った視線で街をとらえ直し、未来の酒田に思いを馳せる、そんなきっかけが生まれたとすれば、成功と言えたのではないだろうか。

  一方、訪問者にとっては、初めての街を地元の人とビデオ撮影しながら歩き回ることで、表の顔だけを見る観光旅行とはまったく違う酒田を体験する、絶好の機会だったと言える。時間的な制約もあって、今回の指令書は事前に私の方で準備したが、この指令書作りの段階から地元の人々とディスカッションを重ねられれば、もっともっと酒田の固有性と独自性が際立つワークショップになることだろう。次回への課題としたい。

加藤到=文
text by Katoh Itaru

 

4. 15:00少し前、10個目の指令「撮影しながら集合せよ」に合わせ、各チームが続々集合。
5. 10台のテレビに、10機のビデオカメラをそれぞれ接続して鑑賞会の準備を行う。
6. ビデオ鑑賞会スタート。同じ指令に、異なる10の風景が流れるため、参加者たちはテレビに釘付けとなった。




参加者の声
酒田の海の映像に、映し手の個性が出ていたのが印象的。
安齋立子(東北芸術工科大学4年)
―初めて会う人とひとつの体験を共有する―。今回の酒田のワークショップでは、普段、なかなか味わうことのできない貴重な経験をすることができました。
  私の出身は、福島市の中通りで、私自身、海に行くのは約5年ぶりでした。酒田の方々はとても温かく迎えて下さり、人見知りの自分でもすぐ馴染むことができ、酒田の景色を楽しみながら課題に取り組むことができました。最終的に撮影した素材をモニターで一斉に観るのですが、酒田の海は必ず撮影され、それぞれに不思議と個性が出ていたことが印象に残っています。観ているものは同じでも、映し出されるものは個々に違う、当たり前のようでいて気付きにくいことを、酒田のまちは改めて教えてくれたような気がしました。

(スプーン2008年4月号に掲載)

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