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三井家のお雛さま 鶴岡市本町
佐藤晶子=取材・文
text by Satoh Akiko
鶴岡市有形文化財に指定された蔵座敷も
三井家のお雛さまも含めて、古いものは大切に、
残せるだけ残していきたい、と思います。


古今雛(原舟月作・江戸後期・江戸製)
 鶴岡市の三井家のお雛さまを初めて拝見したのは、平成11年春、藤田順子著『雛の庄内二都物語』の取材・撮影の時でした。鶴岡市有形文化財に指定されている豪壮な蔵座敷の2階に、雛の名工、三代原舟月の雛が並び、その美しさに思わず感嘆の声をあげたことを覚えています。雛段の右手には、三井糸さんが5歳の時のお祝い着と、糸さんのお父様で、ドイツ文学者の三井光弥さんが七歳の時にお召しになったお祝い着も飾られていました。


抱き人形
瀬戸物屋さん

 昨年2月下旬に発足したNPO法人「三井蔵部」の主宰で、昨年3月には、「三井家のお雛さま」展が開催されました。「庄内ひな街道」初参加の一般公開とあって、三井家の蔵座敷には連日、たくさんの雛見客が訪れて、開期中の観覧者は3,000人を越えたといいます。「三井蔵部」の代表理事を務める三井圭子さんは、鶴岡市の三井病院長、三井盾夫さんの奥様で、4人の男の子のお母さん。盾夫さんは、三井病院の創始者である三井徹さんと糸さんのご長男です。圭子さんは、栄養士の資格をもつお料理上手で、ご家族の食事だけでなく、出産のため入院中の方々の献立も作ってきました。鱒のあんかけ、べっ甲寒天、薄焼き卵と海苔を重ねて巻いた太巻すしなど、三井家伝来の雛祭りのごちそうなども、糸さんから受け継いで、作り続けています。

 鶴岡の三井家は江戸時代から続く素封家で、代々、三井弥惣右衛門を襲名してきました。9代目の三井光弥さんは、明治23年(1890)、鶴岡市肴町に生まれ、荘内中学卒業後、一高、東京帝国大学独文科に学んだ秀才で、帰郷後、ゲーテの研究やヘルマン・ヘッセなどを翻訳したドイツ文学者として知られています。光弥さんには5人のお子さんがあり、長女が、大正6年生まれの糸さんです。本家は弟さんが継がれ、末弟の三井聡さんは、哲学者、木田元氏の県立農林専門学校の同級生でいらしたそうです。「光弥さんの父、八代弥惣右衛門は明治2年生まれで、昭和11年に亡くなられています。骨董にも造詣の深い方だったそうですから、わが家のお雛さまは、この方か、それ以前の方が購入したのかも知れませんね」と圭子さんは推測します。

蔵座敷の建物と一緒に、お雛さまを楽しんでいただけたら、何よりです。

三井家の雛段飾り
豪壮な蔵座敷の二階に飾られた三井家のお雛さま。昨年春には、設立したてのNPO法人「三井蔵部」の主催で「庄内ひな街道」に初参加しました。

  三井家の雛段を飾るお内裏様の女雛の裳には「古今斎原舟月作」と墨書され、朱筆で花押も書かれてあって、たしかに雛の名工、三代原舟月の作であることが確認できましたが、内裏雛だけでなく、両脇の太刀持ちや雅楽七人囃子も、同じ年代の、同じ作者のものと思われます。藤田順子著『雛の庄内二都物語』所収の「舟月を追って」によれば、三代原舟月は、明治32年に67才で亡くなった、とありますから、圭子さんの推測は、もしかしたら当を得ているかも知れません。

  昨年3月には、三井家の米蔵だった建物を改装し、茶寮「遊」というお食事処をオープン。庄内の食材を生かした「雛膳」が雛祭り期間限定のランチメニューとして登場し、好評を博しました。三井病院は鶴岡市美咲町に移転し、本町の旧三井病院跡地では、高齢者向け賃貸マンション「クオレハウス」(仮称)の建設が始まっています。こちらの代表理事も務める圭子さんは、八面六臂の活躍ぶり。「高齢者の方々が安心して、しかも自由な気持ちで暮らせるよう、健康管理や介護のサポートシステム、病院・医療機関との協力態勢を整えた施設を目指しています。来年3月の完成予定です。今年は工事中のため、雛展示はできませんが、来年春にまた、蔵座敷でお雛さまをご覧いただけたらと考えています。古いものは残せるだけ残していきたいと思います。建物と一緒にお雛さまを楽しんでいただけたら、何よりです」。新しい景観が誕生する鶴岡市中心街で、あの美しいお雛さまに再会できる日を楽しみに待ちたいと思います。

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原舟月の
古今雛

はら・しゅうげつの
こきんびな
 明和の頃、古今雛を作った人形師は初代舟月で、名は金五郎。弟子の金太郎が二代を継ぎ、金太郎の子の徳太郎が三代目。三代原舟月は十軒店に雛屋を開き、3月の雛人形、5月の兜人形、6月の山王祭と9月の神田明神の祭礼の山車人形を手掛けた名工である。明治32年、67歳で逝去。三井家の雛は三代の作。
藤田順子著『雛の庄内二都物語 酒田と鶴岡のお雛さま拝見』SPOONの本

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