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  長南家の歳夜膳
大晦日の夜に食べる歳夜膳。
一の膳は、にんじんの白和え、たらと豆腐の煮つけ、納豆汁と新米ご飯。かつて古米を春まで食べていたこの地域の農家では、歳夜だけは新米を食べる風習があったそう。
二の膳は、油揚と椎茸の煮物、温海カブの酢の物、いたどりやぜんまいの煮つけなど。


長南光さん
Chonan Mitsu

農家民宿・農家レストラン「知憩軒」オーナー、綴錦織「土筆工房」代表。今年度、光さんは織りの功績が認められ、鶴岡市卓越技能者賞を受賞。「知憩軒」は、光さんと長女のみゆきさん、長男の奥さま・歩美さんの女性3人でおもてなし。














































誰もが時間を忘れて
くつろぐ農家レストラン。

レストランは予約制のお昼1000円・夜1800円と、予約なしの「おむすびランチ」550円。民宿は、素泊まり1泊3500円。定員5名まで、1組限定。火曜定休。
西荒屋宮の根91
TEL.0235-57-2130

  ぶどうの産地として知られる鶴岡市西荒屋は、古くからの農村
地帯。今も地域性を大切にした家が多く残ります。今回は、
その地で農家レストランを営む長南家にご協力いただきました。


 櫛引地域の西荒屋で「知憩軒」を営む長南家は、江戸時代から続く農家です。オーナーはここで末娘として育った光さん。光さんが家を継いで以後、家の稲蔵を機織工房に、堆肥舎を民宿に、築50年を越える自宅1階を農家レストランに改装して、今の姿を築いてきました。伝統行事や郷土の味を大切に受け継ぎ、「知憩軒」を通して農村文化を人々に伝えている光さんに、お正月行事とお正月料理について伺いました。
  長南家の正月準備は、30日の餅つきから始まります。「かつてはもっと早い時期に杵で餅をついてたんですけど」と光さん。工房の仕事が30日まである今は、産直あぐり加工所の機械を利用して、手早く餅を準備します。大晦日は家の大掃除。前日ついた餅を、小分けにして家のあちこちにお供えします。「家には、神棚や仏壇だけでなく、台所に火の神さまがいたりとか、いろんな場所に神さまがいます。見えないところこそ大切にしたいですからの」。お節料理の準備をし、できた歳夜膳を一年の無事を感謝しながら床の間の神さまに供えたら、同じものを家族でいただきます。にんじんの白和え、たらと豆腐の煮つけ、油揚げと椎茸の煮物、酢の物、山菜の煮付け、納豆汁、新米ごはん。そこに、なぜか青ネギが2本。「ネギを飾る理由はよくわからないんだけど、子どもの頃から歳夜と正月には必ずついてたんです。2本あるので多分、夫婦の長生きを願ってのことではと思いますけど」。初詣は、ご近所の河内神社へ。年が変わる五分前に家を出て12時に到着したら、神社に待機している當人から振る舞い酒を受けます。この西荒屋の御當制度は、およそ600年前から続くもの。地区内の還暦に近い男性3名に当たります。平成18年の節句の日に御當がまわってきた長南家でも、河内神社の掛軸を床の間に飾り、それから一年間、毎日、米と酒と水を供えてきました。御 が終わった今も光さんは、「村の鎮守の神さまが一番ありがたい」と、その掛軸を床の間に掛けています。「御當は、本人も家族も健康でなければ受けられないし、務めの途中で不幸があってもいけません。無事に一年間務めあげるということは、本当に名誉なことなんです」。


長南家の正月膳

元旦の朝に食べる正月膳。一の膳は、家の当主がつくる雑煮を中心に、ゆりねのあんかけ、棒だらと大根の煮つけ、大根と人参の水引なます。二の膳には、きんぴら、煮物、黒豆。簡素で上品な器は、光さんが30年かけて少しずつ集めてきたもの。盛りつけの仕方にも、光さんの洒脱な感性が光ります。


  元旦の朝、長南家の雑煮の準備は毎年、男性が行います。「女性が元旦から動くと福が来ない」という言い伝えから、かつては光さんのお父さん、その後はご長男の幸治さん、幸治さんが結婚して家を出た今は、ご主人の恵三さんがその役目です。昆布とかつお節でとった出し汁に、酒とみりんとしょうゆを入れ、いもがら、もだし、油揚げを煮込みます。皆が起きて、家族がそろった時に、固くならないようにお湯に入れておいた焼き餅を汁に入れて雑煮を煮、光さんが事前に作っておいたお節料理を並べます。そこにネギ2本を添えれば、正月料理の出来上がりです。「前に使っていた囲炉裏は薪だったから、周りに丸餅を指して灰の余熱で焼いてました。それをお湯に入れて固くなるのを防いでの。雑煮にのせる岩海苔も前は生海苔でしたね。こういう時しか食べられなくて」。
  7日には、家中にお供えしたお餅を雑煮にしていただき、11日は恵三さんが蔵にお酒を持ち込み、お神酒をあげる蔵開きを行います。長南家の正月はこうして過ぎます。
「特別なことは何もしていない、普通のものばかりです」と謙虚に微笑む光さんの料理は、長南家で生まれ育ったお祖母さんから受け継いだもの。お母さんが早くに病床に入ってからは、子どもの頃に覚えた味を頼りに料理を作ってきました。そんな光さんにとって、地域の伝統料理がまとまった『4引ふるさとの味』は大切な本。昔からの味を次代に残していきたいと、何度もひっぱり出して参考にしているそうです。土地の恵みに感謝しながら、慎ましく生きる農家の人々。素朴で温かい正月料理に、その心が映し出されています。

ものごころついた時から、歳夜と
正月のお膳には青ネギがのっていました。
長寿を願ってのことだと思います。

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浅賀閑子、佐藤晶子=取材・文
text by Asaka Shizuko,Satoh Akiko
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