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 Home > 大人仕様 2. パン編
 



ドイツ風クルミパン … グラハムの入った素朴な味わい。
パン・ド・セーグル・ノア・レザン … ライ麦のパンに、くるみとレーズン。
ローゲンリング … ドイツサワーの芳醇な香り。
カイザーセンメル … オーストリアの代表。白い生地のかた焼きパン。
ビーネンスティッヒ … 蜂の巣模様のパン“ビーネン”は蜜蜂の意味。
アフタヌーンティーブレッド … ふんわりやわらかくほんのり甘い。
オリビエ … オリーブが香るフランスパン。
ブリオッシュ … バターと卵たっぷり。シスターの後ろ姿。
ナッツブレッド … ヘーゼルナッツのフィリングとパンの層。
マウンテン … 山の稜線を象った、お菓子パン。

何日もかけて作られた
パンのアーチ。

キリストの復活祭は
芸術的な飾りパンの祭典。
村は大いに盛り上がる。

シチリアの州都パレルモから、峠をいくつも越えた小さな村では、イースター(復活祭)の日になると、村じゅうが飾りパンで彩られる。見どころは、キリストとマリア様が対面するパレード。出会った瞬間、人々からは大きな歓声があがるという。

 
食卓にあるだけで
心豊かに、楽しみふくらむ、
パンのある暮らし

パン編 | 指南役 モンパン




ヨーロッパの伝統パンを作る佐々木さん。モンパンは今年13年目を迎えました。
酒田市みずほ1-17-3 [営]11時30分〜18時 [休]日・月曜
0234(26)3057

メソポタミア生まれで
エジプト育ち。嫁いだ先の
ヨーロッパで花開く。


 お米の国日本は、じつは世界のパンを味わえるパン大国。近頃では朝食にパンを食べている人が約7割といわれ、それ以外にもおやつとして食べたりと、もはや日常食となりました。今回ここに並んだのは佐々木さんが作ってくれたヨーロッパのパン。ふんわり焼きたての匂いを感じながら、お国柄豊かなパンの魅力をお届けします。
「ヨーロッパ人にとって、パンは生活の一部なの。宗教的なモチーフや、街の名前がついたパンがあるように、食べるだけに限らず、暮らしに深く根ざしているのね」。ではなぜ、これほどまでパンが生活に浸透したのでしょう。まずはパンの起源からたどってみます。
 パンの主原料である小麦の発祥は今から10000年以上前。原産は西アジアで、メソポタミアで栽培が始まり、その頃から粉にしたものに水を加えて練り、石板や石釜で焼いて食べていたとされています。これがパンの原型で、次にエジプトへと伝わりました。

「あるエジプト人が、暑い日に生地を砂漠の砂の上に放っておいたんですって。それがいつの間にか膨らんでいて、焼いてみたらすごくおいしかった、というのが発酵パンの始まりといわれているの」。その膨らみが酵母によるものだと解明されるのは、それからずっと後のこと。そしてついにパンはヨーロッパに伝来し、パンの文化は急速に発達します。その大きな要因となったのは近世、イタリアの王女とオーストリアの王女マリー・アントワネットがそれぞれフランス王家に輿入れし、各国の食文化が入ったためでした。


原料×地域性×知恵=∞
自然と人とが作るパンはご当地グルメの代表格。


 と、この製パンの歴史はほんの一端で、ほかの国や地域でそれぞれの特性をいかしたパンが形成されていったのです。「その種類はフランスで約1000、スイスやオーストリアなどのドイツ語圏で約3000。日本には400年位前にポルトガル人から伝わって、明治時代から菓子パンを中心に発達してきたの」。世界のパンの種類には、原料や発酵、用途や焼き方、食感などによる違いがあります。「共通するのはどれも香りを大切にしているということかな。原料の香りが引き立つように人々は考えてきたのね。ところでヨーロッパでは、小さいパンは皮を、大きいパンはパンをを食べるってお話を聞いたことがありませんか? だからよくテーブルの下に犬がいるのは、主人がおいしい部分を食べて、あとは犬にあげるからなんだって(笑)」。





身近なものに、ひと手間かけるだけで、
どんなパンも、とっておきのごちそうになる。


 佐々木さんがヨーロッパのパンを作るようになったのは、東京でパン教室を主宰する島津睦子先生との出会いから。島津先生のもと、これまで何度か現地に赴き、パンにまつわる知識や、マイスターとしての技術、その国の文化などを学んできました。「ヨーロッパに行くたび『今回はこのパンに出会えた!』って嬉しい発見があるの。その感動を皆さんにも味わっていただけるように毎日パンを焼いています」。また、現地でのホームステイでは、普段の人々の暮らしから感じ得ることも多いそうです。「オーストリアの家族のお家では、おばあちゃんがお菓子、お父さんがお料理、お母さんがパンを作っていたのね。娘さんたちはベリーを摘みに行って、それをお菓子やジャムにするためにお母さんから作り方を教わるの。“身近にあるものに手をかけて食卓に並べる” これはけっして特別なことではないけれど、家族が力を合わせて何かをしたり、自分の手で作って家族や誰かをもてなす気持ちが、とっても素敵だなと思ったの」。

マイスターの技が光る、
手編みのパン。

本当にあった?
その形にかくされた
神聖なるパンの逸話。

バターと牛乳たっぷりのリッチな編みパンは独語でツォプフといい、おさげ髪を意味する。これは昔、主人が亡くなると妻が一緒にお墓に入っていたという習慣に代わり、パンを女性の髪に象って神に捧げるようになった、という説が残っている。


ひと手間加えるだけで
とっておきで、おいしい
私のパンができあがり。


 ヨーロッパでは、マイスターもお母さんも、日々パンを焼くことで四季や一日を感じています。「ヨーロッパの暮らしは素朴だけれど、いつも『誰かのために』『誰かと一緒に』って考えていて、それがとても豊かなの。だから、皆さんがパンを食べる時も、うちで煮たイチヂクを添えたり、自分のためにお茶を淹れるだけでいい、ほんのひと手間加えたら、それが誰にも真似できない我が家の味。皆さんがそれぞれの“私のパン”を、楽しんでほしいなと思います」。

(スプーン2008年5月号に掲載)

取材・撮影協力=モンパン
Special Thanks to Mon-Pain
高橋江里子=取材・文
text by Takahashi Eriko
和島諭=写真
photograph by Wajima Satoru
日向香=デザイン
design by Hinata Kaori
〈参考文献〉
『Swiss Bakery リッチモント専門学校』パンニュース社
島津睦子『手作りパン工房』グラフ社
島津睦子『これであなたもマイスター 手づくりパン工房』NHK趣味悠々
『焼きたて パンの図鑑』主婦の友社
 

アップルジュエリー
[材料] 紅玉・2kg/水・りんごと同量/上白糖・1.3kg/レモン汁・1〜1.5個分
(1) 皮付きりんご(芯を取ったもの)をまるごと、同量の水と一緒に鍋に入れて、中火で煮る。
(2) 煮立ってきたら、ごく弱火で煮る。
(3) (2)のりんごと水分を、ガーゼや濾し袋に包み、一昼夜搾らずに濾す。
(4) 搾取した液体に砂糖を加えてひと混ぜし、全体が半分の量になるまで煮詰める。この時、絶対に混ぜたりせず、ただ静かに待って、とろみがついたら火を止める。
(5) (4)にレモン汁を入れる。

フルーツのハチミツ漬け
レモン汁とハチミツの分量は2:1の割合で。フルーツはひと口大にカット。冷蔵庫で2、3日保存OK。

オリーブオイルと塩

どちらも種類豊富。
あつあつパンにつけて。



イチゴジャム
ブルーチーズと相性◎。
ハチミツ
パンとハチミツの
色を合わせると好相性。

たまご
たまねぎの皮と一緒に煮て
色つきゆでたまごに。
りんごのキャラメリゼ
鍋にバターをひいて、
りんごをのせ、
グラニュ糖をふり、
オーブンで色よく焼く。

ここに挙げた以外にもコーヒーや紅茶、
ワインやチーズ、ディップ自分流に組み合わせよう。

パンのあたため方
(1)オーブンは180℃〜200℃に予熱しておく。
(2)パンに霧を吹いて、小さいパンなら2〜3分、
大きいパンなら5分ほど焼く。
★皮がパリッとしたら、中もふわふわ!



◆バックナンバーもチェック!
1.和菓子編 | 御菓子司 小松屋(2008年4月号)
山水花鳥風月を映し、日本人の美意識を形にした 五感で味わう芸術品。
2.パン編 | モンパン(2008年5月号)
食卓にあるだけで心豊かに、楽しみふくらむ、パンのある暮らし。

3.花編 | Rosa(2008年6月号)
もの言わぬ花々が、その色彩や造形に託した
癒しのメッセージ。
4.寿司編 | 寿司・割烹 鈴政(2008年7月号)
カウンターに座り、自然体で味わってみたい
粋な大人の旨し時間。

5.フレッシュジュース編 |
フルーツデリにしむら
(2008年8月号)
ビタミンカラーを心と身体に取り入れて
彩る、ヘルシーライフ。
6.カクテル編 | BAR ChiC(2008年9月号)
シックに、カジュアルに、自分の特別な空間で鮮やかなカクテルに酔う。

7.紅茶編 | プティポアン(2008年10月号)
ゆっくり過ごしたい時間。お気に入りの紅茶をいれ、体と心で豊かに味わう。

11.ワイン編 | ワインバー&ダイニング Ravi(2009年2月号)
料理、会話、場の空気。素敵なテーブルを演出する気軽で楽しいワイン術。



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