── 真魚さんのお名前は、土門拳さんが命名なさったのですか。
真魚というのは、弘法大師の幼名です。土門はその頃、弘仁時代(平安初期)の仏教彫刻に凝っていて、弘仁彫刻に造詣の深い美術評論家の水澤澄夫先生とよく室生寺を訪ねていました。子どもが生まれるというので、水澤先生に相談したところ、いろいろ素敵な名前を考えてくださったらしいんですが、生まれてきた赤ん坊を見たら、目はギョロギョロしてるし、とってもそういう名前をつけるような顔じゃなかった(笑)。だから、「真魚」になった、ということのようですよ。すぐ下の妹は真菜、その下は真耶。真耶夫人は、お釈迦さまのお母様の名前ですからね。みんなそんな関係で、土門がその頃、弘仁彫刻に凝っていたせいでしょうね。
私は名前負けしていると言われています。写真にしても、文章にしても、土門の才能は全然、私に遺伝しなかったんです。だから、土門の全集とか作品集が出るたび、出版社から「何か書いてください」と言われるんですけど、私は一切、書かないことにしています。
|