歴史が息づく古蔵の雅味。
静かな時間に浸る宵待ち亭。
そこが街中であることを忘れてしまいそうな雑木林と、合間に延びる小径のアプローチ。その奥で長い間眠っていた古い蔵が、今年八月、日本料理のお店として生まれ変わりました。今から160年前、庄内藩主酒井家ご用達の平田家(屋号・交野屋)の酒蔵として建てられたこの土蔵は、近年、解体の話が持ち上がっていましたが、(株)エル・サンが文化財としての価値を見出し、保存再生に着手。柿渋塗りの見事な欅柱や樹齢200年の梁、檜の床板など、上質な建材の風合いはそのままに、国内外のアンティーク家具を配して、当時の面影を色濃く残したインテリアを完成させました。店名の「LUNA(ルナ)」は、スペイン語で「月」のこと。澄んだ夜空に浮かぶ満月や、霞たなびく朧月など、月が持つ女性らしいイメージや、エル・サン(el sun)が意味する「太陽」と対極にあることに由来しています。
贅を尽くした空間でいただくお昼は、3つのお膳からなる「庄内いづめっこ膳」と、山形和牛の石焼がメインの「庄内花籠膳」の2種。献立は在来野菜をはじめ、庄内の山海の幸が凝集され、日本料理らしい繊細さと、季節感あふれる枯淡な郷土の味を存分に楽しむことができます。「庄内の食は、とても豊かで独創的です。それを由緒ある建物で味わっていただくことで、歴史や文化を伝えられたらと思っています」。エル・サングループでは、平成14年から「食文化シリーズ」として、庄内の伝統食や行事食などを調査・研究し、毎月テーマを設けて各店のメニューに取り入れてきました。この取り組みが、生産者とお客さまに喜ばれる結果となり、それがLUNAのコンセプトに繋がったといいます。「ここを訪れた方に『庄内はいいところ』と実感していただけるよう、食を通して地域性を発信し、さらに魅力を引き出していきたいですね」。文化は土地の財産。現代に息吹いた蔵と正統な味の継承が、この地の豊かさを物語っているようです。
宵月のように儚くも味わい深い、時間。 |
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夜膳は3つのコースから。籠盛りの「花月」(5250円・食前酒・前菜・椀盛・造り・焚合・進肴・酢の物・食事・水物)、山形和牛の石焼がついた「月の旅人」(7350円)、米沢牛と新鮮な魚介がメインの「ましろの月」(9450円)。
お料理にあわせてセレクトされた地酒やワインなどドリンクメニューも多彩に揃う。店内は、カウンター6席、テーブルが1階16席、2階32席。フロアはゆったりとした空間が保たれているためプライベート感は十分。
雪深い庄内の冬には、体の芯から温まる献立を用意。
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(スプーン2007年12月号に掲載)
秋野わかな、高橋江里子=取材・文
text by Akino Wakana,Takahashi Eriko
和島諭=写真
photograph by Wajima Satoru |
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1_11月の献立から。一ノ膳の籠盛は、温海かぶの氷頭なます、もって菊とからどりの胡桃衣和えなど。ニノ膳の煮物は大根と牡蠣の風呂吹き。三ノ膳の舞茸ごはん、薩摩汁。 2_雑木林やウッドデッキなど、街のざわめきを遮る演出。3_1Fに設えたJBL社(米)のアンティークスピーカーとドイツ製のオーディオ。4_静かな灯りの空間。時計もあえて掛けられていない。

お話を聞いた方…
店長 原田一三さん
料理長 佐藤亘さん
敷居の高いイメージを払拭するのは、あたたかく細やかなスタッフの対応。ゲストの緊張をほぐす大人のもてなし術で、見た目にも美しいお料理の数々を心ゆくまで味わうことができる。 |
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蔵屋敷LUNA 交野屋
鶴岡市昭和町12−23
tel.0235-22-1223
昼膳11:00〜14:00(L.O.)
夜膳17:30〜21:00(L.O.)
【休】月曜
【P】15台
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詳しくはHPをご覧下さい。
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