自分らしい宿泊スタイルを選びゆるりゆるりと時間が流れる心地よさ。
ここは湯野浜。温泉街に向かう途中の交差点から山側に入り、住宅地の小道を2〜3分車を走らせ到着したのは、今宵の宿「龍の湯」。車を降りこの辺りの自然を眺めたとき、「湯野浜温泉」イコール「海の宿」のイメージは薄れ、奥深く様々な顔を持った温泉地であることを実感していくようです。
「龍の湯」は山間に佇むどっしりとした蔵造り。その重厚な構えと、しっくいとなまこ壁の白と黒のコントラスト、そして美しい木目をアクセントにした外観は、しっとりと落ち着いた雰囲気に包まれています。
エントランスを抜けると広々と落ち着いたロビー。チェックインを済ませ、庄内に関する様々なパンフレットを手にとっていると「ようこそお越しくださいました」と穏やかな微笑みでこの宿の女将が話かけてくれました。ここで常連の方なら「またお世話になるよ」と楽しい会話が交わされていくのでしょう。
湯治の宿として創業してから75年。昨年は建物を大幅にリニューアルし、よりいっそう心地良い宿として12月にオープンしました。改築途中から常連客からの問い合わせが殺到していたそうで、オープンを待ちわびたお客様に頂く「おめでとう」の言葉が心に沁みるという女将やスタッフたち。長年愛されてきた宿とお客様との心の繋がりを深く感じるところです。
案内されたお部屋は広く落ち着いた純和風。他にも洋室や和洋室もあり目的に応じてセレクトすることができます。どのお部屋もプライバシーを重視し、スタッフが入ることはほとんどありません。我が家のようにくつろいでいられる安心感。気兼ねなく過ごしていただくのが最大のサービス、と心得るこの宿の姿勢が感じられます。部屋の洗面所にはちょっとした洗い物が出来るシンクや、冷水ポットのみの冷蔵庫を設置。お客様の立場にたった嬉しい配慮です。
静養・保養の宿として人気を博す理由はお湯。この宿には種類の異なる2つの源泉が湧き、館内にある趣の異なる湯ぶねを満たしています。浴室は掛け流しの2つの内風呂、打たせ湯、露天風呂、そしてサウナと充実。ゆったりゆるゆる温泉三昧を満喫していくと、体が芯から温まっていきます。また館内では足湯を楽しんだり、檜の香りが溢れる貸切家族風呂も人気。癖がなく飲みやすい飲泉、リラクゼーションルームでのマッサージもオススメのコーナー。連泊しても湯の宿の醍醐味を飽きることなく味わうことができます。
この宿のお料理は地元でとれた素材をふんだんに使った創作料理。朝昼夜とダイニング甍(いらか)でいただきます。ここは単独の和風レストランとしての機能もかねていますから、予約無しでも好きなものを注文しいただくことができます。また予約が必要なコース料理は、3種類を用意。他にも日替わり膳や三十種の単品を組み合わせ、連泊していてもその日の体調に合わせ無理のない食事を楽しめることが魅力です。さらに、オープンキッチンを設えてありますから、朝は出来たてのスクランブルエッグや焼きたての塩鮭をホカホカご飯でいただけると、お客様の評判も上々です。
このようなお部屋、お食事、宿泊スタイルを自由に選択できるお客様本位のシステムは、日帰りや一泊のお客様にも満足していただきながら、滞在の宿としての機能を損なうことのない融通性がこの宿の魅力です。
「いろ寂し 安山岩の巌室に
よき湯たたえて 人すくいをり」
創業まもない頃、理想的な温泉地であることを称え、詠まれた和歌の精神はこの宿に受け継がれた重要な柱。個性的でありながらゆったり自由なスタイルは、お客様が望む自分流のくつろぎを満喫させてくれます。 |