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 Home > バックナンバー > 「庄内湯の宿めぐり」 > 湯田川温泉 九兵衛旅館


取材・文=渋谷みね子
text by Shibuya Mineko
編集=高橋江里子
edition by Takahashi Eriko
写真=板垣洋介
photograph by Itagaki Yosuke
アートディレクション=日向 香
artdirection by Hinata Kaori
2003年12月号掲載 series.9

【今回お訪ねした温泉旅館】
 
【お話しをきいた方】 専務 大滝研一郎さん

新感覚の温泉付きメゾネットも好評。本館と別館での湯めぐりを楽しんで。

 彩りを魅せていた山吹や赤茶色の葉が、木枯らしとともに空に舞う晩秋。湯田川温泉街を取り囲む山々は冬の気配を色濃く映し出し、私たちを迎えてくれています。温泉街のメインストリートから小路に入り、ゆるやかな上り坂を歩いていくと、ほんのり灯る明かりが見えはじめます。幻想的なムードに導かれながら足を進めていくと、そこは心が解かれていくようなアプローチとなっていました。今宵の宿は、今年の夏にリニューアルしたばかりの九兵衛旅館。伝統ある宿の趣を残しながら、静かで粋な宿として生まれ変わりました。

 木をふんだんに使い、柔らかで温かみのある玄関ロビー。靴を脱ぎ館内に入ったら、終日スリッパは履かずにそのままで過ごします。絨毯の柔らかさ、フローリングの感触と、足裏から伝わる心地良さがなんとも言えません。正面に見えるお庭は心落ち着く空間。広めの縁側には居心地のいい椅子とテーブルが設えてあっていい雰囲気です。ウェルカムドリンクはお汁粉。ほど良い甘味に満たされて、早くも幸せな気分に浸ってしまいますが、お風呂やお料理と宿のお楽しみはこれからが本番です。

 スタッフの方に案内していただいたお部屋は、しっとりと落ち着きのある純和風。チェックインを済ませひとしきり寛ぎながら、ゆっくりと湯田川の一夜を満喫することにしましょう。客室はこのほかにも、2階建てになっているメゾネットタイプも用意されています。もちろん専用の温泉付きで、琉球畳が敷かれた和室タイプやフローリングのお部屋など、趣の異なる3つのタイプが用意されています。まさにメゾネット「小さな家」として、ご家族やグループなどさまざまなシーンで楽しめる新しい客室です。

 豊かな効用と肌触りの優しいお風呂は、湯田川温泉の人気のひとつ。この宿の2つの大浴場「山の湯」と「川の湯」はどちらも自慢のお風呂です。山の湯はリニューアルとともに完成したお風呂。季節のうつろいを眺めながら浸る大理石の湯と、竹垣と庭木に囲まれた露天風呂は、常に豊かな湯を湛えています。肩までたっぷりと身を沈めると、心底リラックスしてしまいます。一方、川の湯は、モダンな雰囲気を醸し出す広めのお風呂。なんと壁一面にはめ込まれた大きな水槽には川魚が放されています。戯れる魚の様子を見ながら時を忘れる湯浴みは、この宿ならではのもの。お湯の癒し効果プラス、アクアテラピー効果も期待できます。さらにお得な特典をひとつ。この宿の別館「珠玉や」はすぐお隣。別館の3つのお風呂はすべて貸切風呂ですから、広いお風呂をひとり占めしたい時は別館のお風呂も堪能できます。本館と別館のお客様は、最大6つのお風呂に入り、贅沢な湯浴みを体感することができるのです。

 湯上りの夕食はお食事処でいただきます。ここは嬉しいことに足が伸ばせる掘りごたつ。お行儀の良し悪しは気にせずに、ゆったり気分で季節の味を楽しめそうです。小さな小鉢やお皿に可愛らしく盛り付けられた前菜、庄内の冬には欠かせないハタハタなど、鮮度抜群の素材をふんだんに生かした料理がタイミング良く出されてきます。「凝った創作料理は数品だけにとどめて、素材の良さを生かした料理をお出しする」を心がけているという料理長。そのこだわりが冴える品々に満足しながら、お箸も会話も進んでいきます。 

 部屋の窓の外に見える丹精込められた庭木にも、まもなく雪が舞い降りる頃です。あたりが雪に覆われると物音が消え、さらに静かな時があたりを包む申し分のないお宿。温かなもてなしに触れ、心を尽くした美味な夕食を味わい、静かな宿で眠る。そんな幸せを味わいながら、湯田川の夜が更けていきます。

木の香漂う明るいロビーは優しい色使い。和の古箪笥が印象的。 長年愛されてきた美しいお庭。広縁に出てゆっくりと眺めていただきたい。
   
8畳+10畳の温泉付きメゾネットタイプ客室。フローリングタイプもご用意。 メゾネットタイプ客室。2階。
   
純和風の新客室はゆとりの広さ。このお部屋は温泉付き。 竹垣の庭が美しい「山の湯」。窓のむこうは露天風呂。
   
真っ白なタイルが貼られた楕円の湯船がなんともノスタルジックな「川の湯」。大きな水槽に戯れる魚たちが時を忘れさせる。 目と舌で晩秋の滋味を味わう前菜。
   
鮮度抜群のお刺身。冬にかけて特に美味しい魚が堪能できる。 鯛の南蛮たれ。
 
ハタハタ田楽。できたてアツアツの料理が目の前に出される。
山形県鶴岡市 湯田川温泉

 斎藤茂吉や竹久夢二、横光利一など多くの文人墨客が浴遊した湯田川温泉。鶴岡市出身の直木賞作家、藤沢周平ゆかりの地としても知られています。地内の小学校にある記念碑は、村立湯田川中学校教師時代の教え子たちが建立したもの。映画「たそがれ清兵衛」にも登場する由豆佐売神社にはロケ記念碑が建ち、各宿泊施設では、藤沢文学にちなんだ料理を楽しむことが出来ます(各施設要問い合わせ)。人情味ある作品のルーツを探りに湯治へ訪れてはいかがでしょうか。
(文・高橋江里子)

湯田川温泉 九兵衛旅館

九兵衛旅館は日帰り入浴も可能(昼・夕食付の各プランも有り)。休前日の利用・料金など詳しくは直接お問い合わせ下さい。

住所 鶴岡市湯田川乙19
電話番号 0235-35-2777
URL http://www.kuheryokan.com/
宿泊代 二名様一室利用(お一人様一泊二食付き)
スタンダード:13,000円
メゾネット:21,000円
※お部屋タイプやシーズンにより異なる
部屋数 13室
チェックイン 14時
チェックアウト 11時

■「庄内湯の宿めぐり」バックナンバー


2003年4月号
湯どの庵
[湯田川温泉]
2003年5月号
游水亭 いさごや
[湯の浜温泉]
2003年6月号
萬国屋
[あつみ温泉]
2003年7月号
珠玉や
[湯田川温泉]
2003年8月号
海辺のお宿 一久
[湯の浜温泉]
2003年9月号
亀や
[湯の浜温泉]
2003年10月号
日本の宿 古窯
[上山温泉]
2003年11月号
天童荘
[天童温泉]
2003年12月号
九兵衛旅館
[湯田川温泉]
2004年1月号
龍の湯
[湯の浜温泉]
2004年2月号
名月荘
[上山温泉]
2004年3月号
たちばなや
[あつみ温泉]

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