新感覚の温泉付きメゾネットも好評。本館と別館での湯めぐりを楽しんで。
彩りを魅せていた山吹や赤茶色の葉が、木枯らしとともに空に舞う晩秋。湯田川温泉街を取り囲む山々は冬の気配を色濃く映し出し、私たちを迎えてくれています。温泉街のメインストリートから小路に入り、ゆるやかな上り坂を歩いていくと、ほんのり灯る明かりが見えはじめます。幻想的なムードに導かれながら足を進めていくと、そこは心が解かれていくようなアプローチとなっていました。今宵の宿は、今年の夏にリニューアルしたばかりの九兵衛旅館。伝統ある宿の趣を残しながら、静かで粋な宿として生まれ変わりました。
木をふんだんに使い、柔らかで温かみのある玄関ロビー。靴を脱ぎ館内に入ったら、終日スリッパは履かずにそのままで過ごします。絨毯の柔らかさ、フローリングの感触と、足裏から伝わる心地良さがなんとも言えません。正面に見えるお庭は心落ち着く空間。広めの縁側には居心地のいい椅子とテーブルが設えてあっていい雰囲気です。ウェルカムドリンクはお汁粉。ほど良い甘味に満たされて、早くも幸せな気分に浸ってしまいますが、お風呂やお料理と宿のお楽しみはこれからが本番です。
スタッフの方に案内していただいたお部屋は、しっとりと落ち着きのある純和風。チェックインを済ませひとしきり寛ぎながら、ゆっくりと湯田川の一夜を満喫することにしましょう。客室はこのほかにも、2階建てになっているメゾネットタイプも用意されています。もちろん専用の温泉付きで、琉球畳が敷かれた和室タイプやフローリングのお部屋など、趣の異なる3つのタイプが用意されています。まさにメゾネット「小さな家」として、ご家族やグループなどさまざまなシーンで楽しめる新しい客室です。
豊かな効用と肌触りの優しいお風呂は、湯田川温泉の人気のひとつ。この宿の2つの大浴場「山の湯」と「川の湯」はどちらも自慢のお風呂です。山の湯はリニューアルとともに完成したお風呂。季節のうつろいを眺めながら浸る大理石の湯と、竹垣と庭木に囲まれた露天風呂は、常に豊かな湯を湛えています。肩までたっぷりと身を沈めると、心底リラックスしてしまいます。一方、川の湯は、モダンな雰囲気を醸し出す広めのお風呂。なんと壁一面にはめ込まれた大きな水槽には川魚が放されています。戯れる魚の様子を見ながら時を忘れる湯浴みは、この宿ならではのもの。お湯の癒し効果プラス、アクアテラピー効果も期待できます。さらにお得な特典をひとつ。この宿の別館「珠玉や」はすぐお隣。別館の3つのお風呂はすべて貸切風呂ですから、広いお風呂をひとり占めしたい時は別館のお風呂も堪能できます。本館と別館のお客様は、最大6つのお風呂に入り、贅沢な湯浴みを体感することができるのです。
湯上りの夕食はお食事処でいただきます。ここは嬉しいことに足が伸ばせる掘りごたつ。お行儀の良し悪しは気にせずに、ゆったり気分で季節の味を楽しめそうです。小さな小鉢やお皿に可愛らしく盛り付けられた前菜、庄内の冬には欠かせないハタハタなど、鮮度抜群の素材をふんだんに生かした料理がタイミング良く出されてきます。「凝った創作料理は数品だけにとどめて、素材の良さを生かした料理をお出しする」を心がけているという料理長。そのこだわりが冴える品々に満足しながら、お箸も会話も進んでいきます。
部屋の窓の外に見える丹精込められた庭木にも、まもなく雪が舞い降りる頃です。あたりが雪に覆われると物音が消え、さらに静かな時があたりを包む申し分のないお宿。温かなもてなしに触れ、心を尽くした美味な夕食を味わい、静かな宿で眠る。そんな幸せを味わいながら、湯田川の夜が更けていきます。 |