毎日の暮らしに、ほんのひとさじの夢を探して、
私たちはこの街に住むあなたを応援します。
スプーンネット
トップページへ 特集 バックナンバー

 Home > バックナンバー > 「庄内湯の宿めぐり」 > 上山温泉 日本の宿 古窯


取材・文=渋谷みね子
text by Shibuya Mineko
編集=高橋江里子
edition by Takahashi Eriko
写真=板垣洋介
photograph by Itagaki Yosuke
アートディレクション=日向 香
artdirection by Hinata Kaori
2003年10月号掲載 series.7 …お出かけ編…

【今回お訪ねした温泉旅館】
 
【お話しをきいた方】
調理部長 中川清昭さん、予約課 山本大輔さん

さりげない創意と工夫が随所に光り、あくまでも温かいとっておきの宿。

 山形県内には良質な温泉が点在し、温泉宿はどこも個性豊か。それぞれに特徴を生かした魅力溢れるもてなしで、全国地に山形の温泉ファンを広げています。今日の湯の宿めぐりは、庄内から、一路、上山温泉へと足を伸ばして「日本の宿 古窯」をご案内いたしましょう。

 客室数150室という大規模な宿は、上山温泉街の高台に、その風格ある姿を見せています。広いロビーではピンクの濃淡が美しいコスモスと、ススキを取り合わせた秋らしい花がお出迎え。その横には形良く盛られたお団子。そうそう、今日は中秋の名月です。目線を上げると月までぼんやり写しだされて、なかなか凝った演出。こちらでは館内300ヶ所に個性豊かな花々が飾られています。聞けば、フラワー課という花専任の課が設けられているそうで、そのどれもが、この宿のセンスと生けた方の心が伝わる生き生きしたもの。

「いらっしゃいませ。お疲れ様でございました」澄んだ秋空を思わせるような着物姿の係りの方に案内され、フロントでチェックイン。お部屋に向かう途中では、古窯名物の楽焼を展示している「らくやき画廊」に注目です。この宿に泊まった著名な方々の作品が展示され、その数3500枚。まさに宿の歩みを物語るようです。お部屋に到着して一息ついたら、もう一度ここにきて、ゆっくりと眺める事にしましょう。

 さて、この宿の一番人気のお部屋は露天風呂付き客室です。8畳と4.5畳のふた間がふすまで仕切られていて、8畳のお部屋には掘りごたつ式の応接セットが完備。そして木目が清々しい露天風呂では蔵王の山々や星空を眺めながら、心おきなく湯に浸かる贅沢を満喫できます。また、全部のお部屋に共通することですが、浴衣は朝と夕に着替えができるようにと二着づつ用意されていたり、針や糸、ボタンなどの入ったお針箱がさりげなく置いてあったり、一日ごとに新鮮なお茶をいただける封切り茶が用意されているなど、嬉しいサービスを次々に発見しました。

 この宿の特徴のひとつとして掲げられるのが、オープンキッチン。板前さんの素晴らしい包丁裁きをガラス越しに見れる業界初の空間。その鮮やかな技術に魅せられながら、お料理への期待度は最高潮となります。心躍らせながら席に着くと、テーブルには温かみのある文字と絵で描かれたお品書きや、らくやき画廊に展示されている皿や文字がデザインされている箸袋が置かれ、これがまた実に楽しい! 食事の会話もいっそう弾みます。料理は地元の素材を取り入れ、素材を生かした和風料理。特に牛肉は米沢のチャンピオン牛を仕入れた自慢の素材。いかように調理しても美味しい事請け合いです。さらに「秋の松茸会席といも煮会」は十月末まで開催される特別企画で、松茸をふんだんに使った料理の品々でお客様を魅了します。

 美味で滋味溢れる食事と並んで、おすすめしたいのがお風呂。一階にある「紅花風呂」と八階にある「蔵王」はどちらも100人〜150人が入浴できるかなりの広さ。お昼12時と深夜に男女が入れ替わり、どちらもサウナや露天風呂が楽しめます。なかでも「蔵王」では、蔵王連峰から昇る日の出を、また夜は上山市街地の夜景を眼下に見ることができます。そして午前中に女性用となる「紅花風呂」は、パウダールームが充実。お風呂あがりに朝の身支度ができるように配慮されています。

 館内のいたるところに、細やかな心配りと美しい空間を創り上げている古窯。人の心を人の心で満たしたいという宿の姿勢が、しっかりと感じ取れる宿は、温泉にじっくり浸かり、美味しいものをたらふく味わう。そんな願いがかなう宿。ここならではの上質の時間が刻まれます。

お客様が館内に足を踏み入れるとまず目にする素敵な花の演出。今宵は十五夜。粋な計らいが嬉しい。 露天風呂付きの客室。部屋数が少ないので要予約。
   
8階の大浴場。ダイナミックな眺めと浴室の広さに圧倒される。 露天風呂では爽快な空に気分も開放的に。
   
館内から見つかった縄文土器後の須恵器窯跡。約1200年前のもので県の史跡文化財指定。これを契機にホテル名は「古窯」に改める。手前は窯神社。 陶芸教室「楽焼画房」で楽焼に親しみ、旅の思い出を一枚の皿にしたためる。
   
「らくやき画廊」では美空ひばり、石原裕次郎など個性が光る名作品の数々が並ぶ。 「らくやき画廊」
   
宿自慢の米沢チャンピオン牛はまた格別。美しい庭を愛でながら舌鼓を打つ。 特選米沢牛の炭火焼。
山形県上山市 上山温泉

 上山市のシンボルであり、現在は郷土資料館として美しくそびえる奥羽の名城、上山城。その城下には、新湯・十日町・湯町・高松・葉山・河崎・金瓶など、数多くの地区に温泉が湧いており、それらを総称するのが上山温泉郷です。
 周辺には、上山が生んだ歌人、斎藤茂吉記念館や沢庵禅師がこよなく愛した春雨庵ほか蟹仙洞博物館、リナワールドなど観光名所が満載。
 温泉の泉質は、神経痛・創傷・皮膚病などに効くナトリウム・カルシウム塩化物泉。温まり効果が長持ちするので、肌寒くなるこれからの季節でも、湯上がり散策が楽しめるでしょう。(文・高橋江里子)

上山温泉 日本の宿 古窯

古窯までのアクセス:山形自動車道・山形JCT経由 東北中央自動車道・山形上山I.Cより10分。

住所 上山市葉山5-20
電話番号 023-672-5454
URL http://www.koyoga.com/
宿泊代 お一人様一泊二食付き 20,000円〜
※お部屋タイプやシーズンにより異なる
部屋数 150室
チェックイン 15時
チェックアウト 10時

■「庄内湯の宿めぐり」バックナンバー


2003年4月号
湯どの庵
[湯田川温泉]
2003年5月号
游水亭 いさごや
[湯の浜温泉]
2003年6月号
萬国屋
[あつみ温泉]
2003年7月号
珠玉や
[湯田川温泉]
2003年8月号
海辺のお宿 一久
[湯の浜温泉]
2003年9月号
亀や
[湯の浜温泉]
2003年10月号
日本の宿 古窯
[上山温泉]
2003年11月号
天童荘
[天童温泉]
2003年12月号
九兵衛旅館
[湯田川温泉]
2004年1月号
龍の湯
[湯の浜温泉]
2004年2月号
名月荘
[上山温泉]
2004年3月号
たちばなや
[あつみ温泉]

pageup▲



月刊SPOON編集部

山形県酒田市京田2-59-3 コマツ・コーポレーション内
電話 0234(41)0070 / FAX 0234(41)0080


- 会社概要 - お問い合わせ -
Home Page上に掲載している写真・テキストの著作権は、SPOON編集部およびその著者に帰属します。
無断転用(加工・改変)、ネットワーク上での使用等はご遠慮下さい。
このサイトに掲載しているものは全て、個人でお楽しみ頂くためのもので、著作権は放棄しておりません。