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 Home > バックナンバー > 「庄内湯の宿めぐり」 > 湯野浜温泉 亀や


取材・文=渋谷みね子
text by Shibuya Mineko
編集=高橋江里子
edition by Takahashi Eriko
写真=板垣洋介
photograph by Itagaki Yosuke
アートディレクション=日向 香
artdirection by Hinata Kaori
2003年9月号掲載 series.6

【今回お訪ねした温泉旅館】
 
【お話しをきいた方】支配人 五十嵐 芳さん

由緒ある木造日本建築の別館と近代建築の新館を備えた伝統の宿。

 何度足を運んでも、新鮮な思いで見渡す海の情景。夏の強い日差しから開放された九月の湯野浜海岸は、初秋の柔らかな表情で私たちを迎えてくれます。

 湯野浜温泉の伝説に登場する亀に由来して命名された宿「亀や」は、温泉街の中でもひときわ大きな宿。滝が流れ落ちる大きな門構えには風格が溢れます。玄関までのアプローチを歩けば広いお庭と一緒に亀やのシンボル「龍宮殿」が優美な姿を見せ、お客様の到着を出迎えてくれます。龍宮殿は昭和2年に建築された木造の書院風づくり。歴史ある建物同様、大山の善寶寺の仏師が彫ったと言われる精巧な彫刻をはじめ、質の高い調度品や家具、美術品、工芸品に囲まれた室内には上質な時が流れます。将来、昔ながらの日本建築に愛着が湧く年齢になった頃、きっと泊まってみたいお部屋です。そんな龍宮殿を彩るように、橙色の百合の花が鮮やかに咲いていました。

 玄関を入ると広々としたロビーの中を、川が流れる大胆な造り。天井から降り注ぐ光に映し出された竹林や重厚な石作りの橋とともに、実に印象的な空間です。また、ロビー真中にあるお茶処「萬年寿」では、八種類が調合された健康茶を鉄瓶のお湯でいただくことができます。

 いくつもの表情が楽しめるロビーを後にして、スタッフに案内されるままお部屋に到着。窓を開けると、目前に広がる海から潮騒と磯の香りが包み込みます。お天気にも恵まれた今日の夕方には、夕陽の美しさにも出会えるであろうと期待度満点。桜湯と手作りの和菓子をいただきながら、思わず笑みがこぼれます。

 さて、今日の宿泊は、とりわけお客様のプライベートを大切にしてゆっくりと過ごしていただける「潮音プラン」。お料理の内容はもちろん、これまで以上に徹底した作りたてのお料理をお出しできるようにと、潮音プラン専用の調理場とお部屋専任スタッフで構成された贅沢なプランです。お部屋でのチェックインも先程いただいた手作りの和菓子も、潮音プランならではのもの。また朝の食事も潮音プラン専用の会場でとれ、食事の後も11時のチェックアウトまでゆっくりお布団で横になっていられるなど、お客様の気持ちを考慮し、ゆったりとくつろいでいただくための気配りが光ります。

 そんな宿の自慢のひとつがお風呂。男女とも大浴場と露天風呂が完備されていて、もちろん景観も満点。爽快な気分にさせる大海原と心地よいお湯が、どこか気忙しく過ごした8月の日々の疲れをゆっくりと癒やすようです。そしてご家族で愉しむならば、檜の香りが漂う貸切風呂「松の湯」がおすすめ。家族が多くても大丈夫。湯船は贅沢なほどにたっぷり余裕の広さです。

 ゆったりとした湯浴みの次は、お部屋でのんびりお食事を楽しみましょう。お料理は地の素材を生かし、ひと手間加えた品々。料理に対するこだわりを感じるものが並び、四季折々の自然の贈り物を存分に味わうことができます。特に潮音プランは温かい物は温かいうちに、冷たい物は冷たいうちにを心がけてお出ししてくれる心づかいが、お料理の味をいっそう際立てています。

 一階のラウンジにはカラオケやクラブが完備されていますが、土蔵作りで重厚な店構えの酒と肴の「蔵」も魅力的。なかでも麦きりと特製スープのラーメンが人気だそうで、お酒の後、小腹が空いた方は是非のれんをくぐってみてください。

 心地良い温泉に浸る時間も、美味しい料理を味わう時間も、目の前にはいつも雄大な日本海。伝統ある宿でありながら、施設、宿泊プラン、料理など、更に進化を続けるスタイルに、また次回に訪れるのが楽しみな海の宿です。

皇室の方もご宿泊された龍宮殿特別室の「乙姫」は、格調高さと優しい木の温もりが心地良いお部屋。 高い天井と広々としたロビーにはいくつもの違った椅子。あなたのお気に入りを見つけて下さい。
   
竹林には光が差し込み、川が流れ、開放感たっぷり。 庄内の地酒や肴をご用意している「蔵」は麺類も人気メニュー。
   
龍宮殿への入り口。足を踏み入れた瞬間から気品ある時が流れる。 天女の湯。
   
「松の湯」は貸切風呂とは思えない広さ。 潮音プラン用お料理の数々。
   
お造りは小鯛の姿造り。「今朝の市場から」と風流なタイトルが入り、その日の水揚げで小鯛以外の魚が変わる。
 
山形県鶴岡市 湯野浜温泉

 湯野浜が100年先まで愛される街であるように発足した「湯の浜100年株式会社」なる新プロジェクト。今後の展開に注目です。シンボルマークのデザインはgood design company 水野学氏。オリジナルキットは湯野浜の一部旅館にて販売中。(文・高橋江里子)

シンボルマーク

湯野浜温泉 亀や

住所 鶴岡市湯の浜1-5-50
電話番号 0235-75-2301
URL http://www.kameya-net.com
宿泊代 亀や1日10組限定特別プラン「潮音」
二名様一室利用 一泊二食付
新館:21,000円  本館:18,000円
部屋数 71室
チェックイン 15時
チェックアウト 11時(潮音のみ)

■「庄内湯の宿めぐり」バックナンバー


2003年4月号
湯どの庵
[湯田川温泉]
2003年5月号
游水亭 いさごや
[湯の浜温泉]
2003年6月号
萬国屋
[あつみ温泉]
2003年7月号
珠玉や
[湯田川温泉]
2003年8月号
海辺のお宿 一久
[湯の浜温泉]
2003年9月号
亀や
[湯の浜温泉]
2003年10月号
日本の宿 古窯
[上山温泉]
2003年11月号
天童荘
[天童温泉]
2003年12月号
九兵衛旅館
[湯田川温泉]
2004年1月号
龍の湯
[湯の浜温泉]
2004年2月号
名月荘
[上山温泉]
2004年3月号
たちばなや
[あつみ温泉]

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