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 Home > バックナンバー > 「庄内湯の宿めぐり」 > 湯田川温泉 珠玉や


取材・文=渋谷みね子
text by Shibuya Mineko
編集=高橋江里子
edition by Takahashi Eriko
写真=板垣洋介
photograph by Itagaki Yosuke
アートディレクション=日向 香
artdirection by Hinata Kaori
2003年7月号掲載 series.4

【今回お訪ねした温泉旅館】
 
【お話しをきいた方】専務 大滝研一郎さん

展望風呂を贅沢に貸しきって心地よい温泉を独り占め。

 今年1月、湯田川温泉に温もりのあるお宿が誕生しました。その名も「珠玉や(たまや)」。どことなく心くすぐられるネーミングに、宿への期待がふくらんでいきます。この宿は江戸時代から続く老舗旅館「九兵衛旅館」の別館として、昨年まで閉じていた温泉街の旅館を譲り受け、新たに改装しオープン。客室をわずか9室に抑えてプライベートを重視した癒しの宿は、柔らかなお湯、季節のお料理、素朴で温かなもてなしという贅沢さにもかかわらず、リーズナブルなお値段で泊まれる嬉しい宿なのです。

「珠玉や」は旅館が建ち並ぶメインストリート沿い。趣のある門構えが目印です。決して大きくはありませんが、随所に木をふんだんに使った和風の外観、南天や沈丁花など山野草が配されたアプローチからは気取りのない温かみと上品さが伝わってきます。

 大きな格子戸をゆっくりと開けて玄関へ。古民家の古材をふんだんに使った天井や梁、床など、どこかレトロな雰囲気を醸し出す民芸調の内装に懐かしさが漂います。靴を脱いで柔らかな日差しが降り注ぐロビーに足を進めると、嬉しい飲み物のサービス。チェックインと宿の説明を受けながら、喉を潤おしました。

 荷物を持っていただき案内されたお部屋は、純和風のシンプルなお部屋。特別に飾りたてない内装に、温泉宿の素朴さが感じられます。窓からは湯田川の街並みや竹林の山々が手にとるように眺められ、湯田川の景観を一望することができます。

 食事の前はやっぱりお風呂。初夏の日差しで汗ばんだ肌を、お湯でさっぱりと流しにいきましょう。1階にある二つのお風呂と5階の展望浴場はすべて貸切ですが予約は不要で、内側から鍵がかかっていなければいつでも入ることができます。どのお風呂も掛け流しですから、常に新鮮なお湯が溢れています。湯田川温泉は国民保養温泉地に指定されているだけあって、折り紙付きの良質泉。湯船に浸かって手足を伸ばしていくと、しだいに心も体も浄化されていくようです。そしておすすめは五階にある展望浴場。お天気のいい日は遥かに仰ぐ鳥海山や湯田川の街並み、周辺の山々がいい眺め。天井まで続く大きな窓をガラリと開け放って、小鳥のさえずりを聞きながら頬を撫でる爽やかな風を感じたり、夜には満天の星空が降りそそぐプライベート空間を満喫することができます。

 日も暮れ始め、いよいよ夕食の時間です。2階の和風お食事処でいただくお料理は、山海の幸を生かしたふくよかな旬の旨さが自慢です。孟宗竹で有名な湯田川ですが、ここは海にも近い山の温泉地。日本海の新鮮な魚介類、みずみずしい山菜やフルーツ、そして庄内米や地酒など、どれも逸品揃いです。この宿の名前「珠玉や」の「珠玉」は真珠とか宝石を意味し、美しいもの大切なものという比喩的な意味合いも持ちます。そしてもうひとつ「海に産する珠と、山に産する玉」という山海の幸に育まれた食材の豊富さも由来しているのです。その名のとおり、テーブルには地元で収穫された野菜や山菜、由良港で水揚げされた新鮮な魚などをメインにした季節料理が彩られます。そのどれもが飾り立てることない田舎風に仕上げられ、口に含むたびに素材の良さを実感していきます。

 食事を終え満腹になったところで、下駄をカラコロ鳴らしながら腹ごなしの散策。これからの季節、温泉街はずれの田圃に群生する蛍が柔らかな蛍火で優しい時を演出します。

 7月5日には本館の九兵衛旅館もリニューアルオープンし、「珠玉や」本来の魅力が本当に引き出されるのはこれから。古き良き伝統はそのままに、新しいおもてなしでお客様を迎えながら、徐々に「珠玉や」の輝きを増していきます。

食事は全て和風お食事処で。オープンスペースながら個室を思わせる。 こぢんまりとシンプルな客室。
   
5階 展望浴場。庄内平野と鳥海山が見え、近くの山々の緑も美しい。 1階 檜風呂(大)。3カ所の風呂は全て貸し切り。
   
ロビー。館内の至るところに小倉遊亀さんの日本画が飾られている。 前菜は、ごまどうふ、稚バイ貝、もずくの冷たい茶碗蒸し。
   
湯田川から港へは車でわずか15分ほど。新鮮な岩ガキが食べられる。(要予約) 朝、水揚げされた獲れたての魚介類が姿を変えて並ぶ。
   
口細ガレイ。庄内浜の旬の魚を楽しめる。 炊き合わせは月山筍などの地野菜で彩られる。
 
ハタハタの天ぷら。メゴチやキスが並ぶ日もある。
山形県鶴岡市 湯田川温泉

 湯田川温泉は一昨年、庄内では初の「国民保養温泉地」に指定されました。効能、湧出量、景観、環境衛生、災害対策など、一定の条件を備えた温泉地を環境省が定めるものです。
 毎年、夏の土用丑の日に行われる「温泉清浄祭」。今年は7月27日です。前日26日は19時から温泉街広場にて演芸会が行われ、映画「たそがれ清兵衛」の1シーンにも登場した湯田川神楽も上演されます。1年間の無病息災を願う「丑湯治」の言い伝えにあやかって、湯田川温泉に出かけてみてはいかがでしょうか。
(文・高橋江里子)

湯田川温泉 珠玉や

「珠玉や」を情緒豊かに演出する数々のアートたち。女流画家として時代に名を残す小倉遊亀さん(1895〜2000)の作品もその1つ。

住所 鶴岡市湯田川乙39
電話番号 0235-35-3535
URL http://www.kuheryokan.com/tamaya/
宿泊代 平日二名様一室利用(お一人様一泊二食付)11,500円〜
※休前日+1000円、特定日+2000円(利用人数により異なる)
部屋数 9室
チェックイン 14時
チェックアウト 11時

■「庄内湯の宿めぐり」バックナンバー


2003年4月号
湯どの庵
[湯田川温泉]
2003年5月号
游水亭 いさごや
[湯の浜温泉]
2003年6月号
萬国屋
[あつみ温泉]
2003年7月号
珠玉や
[湯田川温泉]
2003年8月号
海辺のお宿 一久
[湯の浜温泉]
2003年9月号
亀や
[湯の浜温泉]
2003年10月号
日本の宿 古窯
[上山温泉]
2003年11月号
天童荘
[天童温泉]
2003年12月号
九兵衛旅館
[湯田川温泉]
2004年1月号
龍の湯
[湯の浜温泉]
2004年2月号
名月荘
[上山温泉]
2004年3月号
たちばなや
[あつみ温泉]

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