桜の木々とせせらぎに抱かれ、山と川と日本海の恵みを堪能する。
優美なラインを描く黒瓦の屋根。重厚な趣を湛えながらも周囲の景観とバランス良く融合された日本建築。外観から内装まで純和風で統一されたこの宿は、あつみ温泉の中でも一際大きな規模を誇る「萬国屋」です。
アァ温海岳から 温海を見れば
ヨイヤサ
花の湯の町 花の湯の町
灯がともる
サラリ サラサラ
ヨイサノウ
温海町の豊かな情緒を唄にした「あつみ小唄」でも「花の湯の町…」と唄われているように、春は温泉街を流れる温海川に250本の桜が見事なまでの美しさを見せてくれます。萬国屋の先々代の女将が、当時殺伐としていた温海川にソメイヨシノの桜を植えたのが大正元年。その後、幾度かの災害にあいながらも、現在まで萬国屋の歩みと共に温泉街を見守ってきました。今ではあつみ温泉の春を象徴するものとして、たくさんの人々に愛されています。
年間12万人ものお客様をお迎えする広々としたロビーに入ると、着物姿で出迎えてくれるにこやかな笑顔にホッとしながら、宿への期待に胸弾む思いがしてきます。お部屋は上品なつくりの落ち着いた和室。光が差し込む大きな窓からは、温泉街の街並みや、宿が所有する山の樹木が、四季折々の景観を見せてくれます。お部屋のテーブルの上に準備されているのは温海名物のお菓子の他に、漆器に入った庄内の漬物四品。これがまた美味しくて、ついついお茶の時間が長くなってしまいます。こんな郷土にこだわった演出もまた、旅先での妙味を実感できる魅力のひとつです。ゆったりとした畳の心地良さと開放感に誘われて、ゴロンと寝そべりたくなるほどにリラックス。特に10階の特別室は格調高い二つの和室とベッドルーム。床暖房が嬉しい温泉露天風呂では、心ゆくまで贅沢な時を満喫できます。
プライベートなお風呂も心惹かれますが、大浴場もまたおすすめです。3階の大浴場へ向かうアプローチは空中回廊や浮橋を渡る斬新な設計。印象的な宿の思い出となる空間となり、お風呂への道が楽しみとなります。そして湯舟の中でお花見ができる1階の「花美の湯」もまた格別。良質な温泉を風情とともに堪能することができます。
身も心も潤ったところで、楽しみな夕食です。団体や小グループを除いては、各客室でいただくことができます。マイペースにゆったりと食事を楽しめるシチュエーションは、お料理への期待感を一層高めるようです。あらかじめ伝えておいた時間に、客室係の方が手際良く運ぶ料理は半懐石。庄内でとれる山海の幸は、持ち味を大切にしながら仕上げられています。特に春はコゴミ、あいだけ、しどけ、わらび、タラノメと山の味覚が満載です。盛り付けは上品で繊細。目と舌で季節を感じさせてくれるメニューが並びます。
館内はその他「じょなめーる」「かがぼーし」「ほすばーる」など、方言が生かされた遊び心たっぷりな名前のバーやクラブ、パーティルームが充実。夕食後はそれぞれお好みの過ごし方で温海の一夜が更けていきます。
この宿の人気の秘密はもてなし。心地良いお部屋に、気持ちの良い心くばりはお客様にとって最高の贅沢と言えます。この宿の接客には業界内でも一目置かれるほど定評があり、従業員は新人もベテランも接客への勉強は欠かしません。そんな熱心に取り組む姿勢が、快適な空間を生み出しているに違いないのです。
大きな宿だからこそ味わえる醍醐味と、暖かな雰囲気と行き届いた心づかい。言葉に尽くせない「いい気持ち」を味わえるこの宿には、温海川の桜のように「もてなしの心の花」が咲き誇ります。 |