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 Home > バックナンバー > 「庄内湯の宿めぐり」 > 湯野浜温泉 游水亭いさごや



取材・文=渋谷みね子
text by Shibuya Mineko
編集=高橋江里子
edition by Takahashi Eriko
写真=板垣洋介
photograph by Itagaki Yosuke
アートディレクション=日向 香
artdirection by Hinata Kaori
2003年5月号掲載 series.2

【今回お訪ねした温泉旅館】
 
【お話しをきいた方】専務 五十嵐 浩さん

心和むくつろぎの時が流れる宿の、眺望、設え、料理、そして湯。

 潮風に揺らぐのれんに誘われて歩をすすめれば、打ち水された艶やかな石畳。ぼんやりとした灯りと石や竹を配した和の風情で出迎えてくれるのは、湯野浜温泉「游水亭 いさごや」です。「いさご」とは「伊砂」と書き、「伊」は創業者 五十嵐伊三郎の伊。風や波に合わせながら流動する砂のように、時代に合わせ変化しながらも反映し続けるという創業者の思いが、この宿の名に込められています。

 柔らかなお香の香りと琴の音が流れるロビーとラウンジ。趣のある庭や池を眺めながら一服のお抹茶と茶菓子をいただけば、癒しの時のはじまりに心が導かれていくようです。ラウンジでは夜になると、心を落ち着かせ心地良い眠りに誘うハーブティのサービスがあったり、アルコールが楽しめるナイトラウンジとなる空間。時にはアトランダムでライブも行われるので、ジャズやピアノのミニコンサートを楽しむ幸運に恵まれるかもしれません。

 案内されるままお部屋にはいると、終日、日本海を一望できる大きな窓が目に飛び込んできます。それはまるで一枚の絵画のようでもあり、見渡す海原にふたたび胸を打たれます。特に和風スイートルームは壁一面にガラスがはめ込まれ、それはもうダイナミックな景観。革張りの椅子に体を委ねていると、贅沢な休日のシーンに酔いしれていくようです。また、ジュニアスイートルームは三世代で利用してもゆったりくつろげる広さですから、十人程度のお客様が同じお部屋で過ごすことができます。スタンダードルームはゆとりのある広さ。和洋スタンダードは畳の上でも車椅子が利用できる配慮がされるなど、それぞれ粋な和のテイストが盛り込まれた落ち着き度満点のお部屋となっています。

 この宿のチェックインは二時と早め。お食事の前にゆっくりとお風呂に浸り、お部屋で寛ぐ余裕があります。女性の方ならレディースエステプランを予約して、アロマテラピーマッサージやアジア式マッサージを体感するのも、心と体をリフレッシュする優雅なひとときとなります。

 さあ、浴衣に着替え、雪駄を履き、四階にあるお風呂を堪能しましょう。お風呂へ続くエントランス庭では、改装前の建物の屋根に置かれていた鬼瓦が、今も変わらぬ風格でお客様を見守っています。
「湯の浜五湯」と称される二つの内風呂と三つの露天風呂のお風呂は男女入れ替え制。夜と朝に入れば五つの湯心地を愉しむことができます。湯は無色透明で、湯加減も肌触りも抜群。庭園や海を眺めながら、また、高い天井を仰ぎながら体を沈めていけば、日頃の疲れが溢れるお湯と共に流れていくようです。

 目も心も奪われるのはお部屋やお風呂だけではありません。地元の食材にこだわって素材の良さを存分に生かし、丁寧な仕事で仕上げられたお料理もまた、幸せな時を与えてくれます。特にこれからの季節は海も穏やかになり、旬の魚が豊富。吟味された多彩な海の幸が、お風呂上がりの空腹を満たしてくれます。夏の間なら、日本海に沈む夕陽を真正面に眺めながらの素晴らしいシチュエーションのなかでいただくお料理は一層味わい深く、旅の思い出に花を添えるに違いありません。そして、お料理の味を引き立てるお酒も楽しみのひとつ。なかでも、庄内ではここでしか味わう事のできない限定の地酒は格別です。二合ずつ注がれた片口でいただくので、高価なお酒も手軽に一献傾けることができます。

「心豊かな時間と幸福をお客様に提供する」というコンセプトが随所に満ち溢れているこのお宿。そして、寄せては返す波もまた、心を穏やかにする癒しのひとときを演出しています。

見事な景観と上質な空間で満たされる和風スイートルームのリビング・ダイニング。 頬をなでる潮風が心地よいスイートルームの露天風呂と檜風呂。
   
庄内の地酒と県産ワインが出番を待つ酒庫「幽居」で美酒をセレクト。 「いさごや」所有の絵画が季節ごとに展示されるラウンジでは、お客様が思い思いの時を過ごす。
   
和風スイートルームの主室(和室)。和のテイストたっぷりのお部屋はリラックス効果を高めてくれる。 お風呂入口のエントランス。暖簾をくぐり心ゆくまで湯浴みを満喫。
   
吟水湯 展望露天檜風呂。豊かな湯量と美肌効果のある湯には長めにのんびりと浸かりたい。 料理とは目と舌で愉しむもの。そんな心意気が伝わる季節料理の数々。
   
山形県鶴岡市 湯野浜温泉

 もとの名を「亀の湯」と称した湯野浜温泉。天喜年間、一人の漁夫が、海辺で亀が湯浴みする姿を見たことから、この地に温泉が広まった、という故事に由来するものです。ここ湯野浜温泉街は、秀峰鳥海山を望み、壮大な日本海と、白砂・青松の大砂丘に面したロケーションで古くから歓楽地として栄えた面影を、今に残しています。
 奥羽三楽郷の一つである名湯は、60℃のナトリウム・カルシウム塩化物泉で殺菌効果に優れ、皮膚病・婦人病などの効能があるほか、湯上がりの保温効果が長持ち、美人になれるお湯として知られています。
(文・高橋江里子)

湯野浜温泉 游水亭いさごや

「游水亭」は、酒田市出身の書家・渡部伸さんがネーミング。酒庫の地酒は山形県初の日本酒学講師・鶴岡市の佐野洋一さんセレクト。

住所 山形県鶴岡市湯野浜1-8-7
電話番号 0235-75-2211
URL http://www.isagoya.com/
宿泊代 お一人様一泊二食付:15,000〜35,500円
(お部屋のタイプやシーズンにより異なる)
部屋数 49室
チェックイン 14時
チェックアウト 11時

■「庄内湯の宿めぐり」バックナンバー


2003年4月号
湯どの庵
[湯田川温泉]
2003年5月号
游水亭 いさごや
[湯の浜温泉]
2003年6月号
萬国屋
[あつみ温泉]
2003年7月号
珠玉や
[湯田川温泉]
2003年8月号
海辺のお宿 一久
[湯の浜温泉]
2003年9月号
亀や
[湯の浜温泉]
2003年10月号
日本の宿 古窯
[上山温泉]
2003年11月号
天童荘
[天童温泉]
2003年12月号
九兵衛旅館
[湯田川温泉]
2004年1月号
龍の湯
[湯の浜温泉]
2004年2月号
名月荘
[上山温泉]
2004年3月号
たちばなや
[あつみ温泉]

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