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 Home > バックナンバー > 「庄内湯の宿めぐり」 > 湯田川温泉 湯どの庵


取材・文=渋谷みね子
text by Shibuya Mineko
編集=高橋江里子
edition by Takahashi Eriko
写真=板垣洋介
photograph by Itagaki Yosuke
アートディレクション=日向 香
artdirection by Hinata Kaori
2003年4月号掲載 series.1

【今回お訪ねした温泉旅館】
 
【お話しをきいた方】支配人 五十嵐 芳さん

コンセプトは「宿に旅する」。 自然体のおもてなしが心を癒して。

 はやる心を抑え、そっと格子戸を滑らせると、美しい竹林と石灯篭が静かに佇み、足元を照らす和の明かりが玄関へと誘ってくれます。

 ここは湯田川温泉にある宿「湯どの庵」。その昔、竹久夢二が湯田川での常宿にしていたという由緒ある建物は、時を経て、女性客や熟年カップルに愛されるお宿になりました。

 玄関に入ると、純和風の外観からは想像できない空間が広がります。奥までまっすぐに伸びた黒の廊下、白い壁と深い色調の柱と梁。和紙から伝わる幻想的な明かりや、随所に置かれた、さりげない小物たち。和と洋が混在したスタイリッシュな空間を演出しています。

 まずは靴をぬぎ、ラウンジへ。ハーブティーをいただきながら、チェックインを済ませると、女性スタッフが、この宿のシステムを説明してくれます。ここでは、ゲストのプライベートを邪魔せずに、くつろいでいただくようにと、宿のスタッフがお部屋に入ることはありません。日本旅館にみられる情緒や風情と、ホテルが持つ機能性。その両方が生かされ、「和であり洋である」、そして「古くて新しい」という感覚が見事に融合されています。

 つづいて廊下を挟み、庭の見えるリビングルームに足を踏み入れると、和箪笥と個性的な観葉植物がトップライトに照らし出され、ゲストを待ち受けます。柔らかな明かりが奏でる落ち着いた空間。ソファの心地良さとあたりの静寂さに包まれて、時間を忘れて、眺め入ってしまいます。 しかし、のんびりするのはもう少しあとに取っておき、まずはお部屋に落ち着いて、食事やお風呂を余すことなく満喫することにしましょう。 やはり和と洋がバランスよくアレンジされた客室。一段高くなっているベッドコーナーは畳になっていて、足を伸ばしてくつろげます。床暖房が完備され、冬は裸足でもポカポカ。しかも、殺菌効果と空気清浄効果のある炭を床下に敷き詰めて、気持ちよく使えるよう配慮されています。窓には萱の簾が張ってあり、和のテイストたっぷり。心からお客様に安らいでいただくという思いが随所に見られるお部屋です。

 そろそろお風呂をいただくとしましょうか。檜風呂と石風呂の二つの内風呂は24時間入浴ができて、夜八時には男女が入れ替わります。無色透明なお湯はとても柔らか。ぬるめですが、肩まで身を沈めていると、徐々に体の芯から温まり、じんわりと汗が出てきます。「一度入ったら、癖になりますよ」と笑って話していた支配人の言葉に納得。浴衣と丹前に着替えて、リラックスし、お食事を待つことにしましょう。浴衣の帯はいい感じ。いくらか伸縮する素材で作られているので、柔らかで絞めやすく、緩みにくいのです。

 さあ、いよいよお待ちかねの夕食は、ダイニングルームでいただきます。ジャズが流れる、ほの暗い室内。テーブル中央にトップライトが落ち、運ばれてきたお料理を照らします。庄内の四季の食材をふんだんに使ったお料理は、懐石料理をベースにしたオリジナル創作料理。「えっ、これがお刺身?」と目を疑ってしまう斬新さ。お酒は地酒、ビール、ワインからお好きな銘柄をセレクトしながら、お料理と共に楽しむことができます。そして、食器一つひとつにもセンスが光る嬉しい演出。二人以上のお食事は、欄間や飾り窓、床の間などに大正ロマンが残るお部屋で、ゆったりといただくことができます。

 庭の景色をぼんやりと眺めたり、思いっきりお湯に手足を伸ばしたり。ゆったり流れる時に身を委ねる開放感。押しつけがましくなく、あくまでもさりげなく。そんな居心地の良さが「また来よう」の気持ちにさせるんですね。庄内にもう一つ故郷を見つけたような気持ちになりました。

玄関から客室へのアプローチは、あたかもモダンなギャラリーのよう。 大正建築の面影が残るお部屋で、美食・美酒に酔いしれるのもいい。
   
窓の向こうにある竹林の美も最大限に生かされたラウンジ。 檜風呂と石風呂、趣異なる湯船をゆっくりと堪能したい。
   
シックな洋の雰囲気に、和のアクセントを取り込んだ客室。 一皿目に味わう穴子の道明寺蒸し。
   
鯛、帆立、かんぱちのお刺身は卵と野菜でサンド。酢味噌ソースが決め手。 庄内の春を告げる桜鱒の焼き物。
   
ハンバーグはばんけ味噌と春野菜を添えて。 庄内の幸を炊き込んだご飯と卵豆腐の吸い物をいただく頃には、気分もお腹も大満足。
 
愛らしい苺を添えたヨーグルトムース。
山形県鶴岡市 湯田川温泉

美しい自然に囲まれ、閑静な環境の中に佇む湯田川温泉。素朴でこぢんまりとしたこの湯宿街は、和銅年間の開湯以来、庄内藩主の湯治場として、家庭的な温泉場として永く人々に愛されています。春には、紅白の梅が見事に咲く梅林公園の散策や、孟宗竹の名高い産地として知られることから、旬の孟宗料理を楽しめます。
「昔、傷を負った白鷺が、ここ湯田川で傷を癒した」という一説が残る良質の湯。脳波のアルファ波をひき出す作用のある硫酸イオンでリフレッシュ。40〜43℃と、少し低めの湯はゆっくりと浸かることで高いリラックス効果が得られそうです。
(文・高橋江里子)

湯田川温泉 湯どの庵

2001年7月にリニューアルオープンした「湯田川温泉 湯どの庵」。純日本的な外観はそのままに、モダンな内装をトータルプロデュースしたのは、家具デザイナーの岩倉榮利さん。

住所 山形県鶴岡市湯田川乙38
電話番号 0235-35-2200
URL http://www.kameya-net.com/yudono/
宿泊代 お一人様一泊二食付:14,500〜25,500円
(お部屋のタイプやシーズンにより異なる)
部屋数 12室
チェックイン 14時
チェックアウト 11時

■「庄内湯の宿めぐり」バックナンバー


2003年4月号
湯どの庵
[湯田川温泉]
2003年5月号
游水亭 いさごや
[湯の浜温泉]
2003年6月号
萬国屋
[あつみ温泉]
2003年7月号
珠玉や
[湯田川温泉]
2003年8月号
海辺のお宿 一久
[湯の浜温泉]
2003年9月号
亀や
[湯の浜温泉]
2003年10月号
日本の宿 古窯
[上山温泉]
2003年11月号
天童荘
[天童温泉]
2003年12月号
九兵衛旅館
[湯田川温泉]
2004年1月号
龍の湯
[湯の浜温泉]
2004年2月号
名月荘
[上山温泉]
2004年3月号
たちばなや
[あつみ温泉]

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